キャプテン・キュンメルの不思議な剣 [ストーリー - キャラクター]
蝶の司キャプテン・キュンメルは、不思議な剣を持っている。
謎に立ち向かうとき、蝶たちが手がかりを探し、剣が敵を退治する。
その剣は長い間、ある廃墟の片隅にある、大きな石に刺さっていた。
しかし剣は、このような廃墟にとどまることが望みではなかった。
剣は、ある杯を探していた。
この世のどこかに、剣とつがいとなる運命の杯が待っていると、剣は知っていた。
その杯が、どこにあるのか、剣は知らない。
分かっていたのは、杯は、その守り手である、神秘の乙女とともにある、ということだけだった。
杯とめぐり会ったら何が起きるのか、剣は知らない。
しかし剣は、杯を探し出さなければならない。
そのことだけは知っていた。
ドードー・ジェット [ストーリー - キャラクター]
ゼフィーベの森の奥に、あるロボットがいた。
ドードーという名前だったけれど、鳥のドードーとちがって、空を飛ぶことができた。
それなので、鳥のドードーではなくて、ドードージェットだった。
ドードー・ジェットは、へんぴな山奥で畑をたがやして、ランタンカボチャを栽培していた。
ランタンカボチャは、カボチャちょうちんやかぼちゃロウソクが作れる、かぼちゃ油の豊富な作物だった。
それでドードーは、ランタンカボチャを栽培して、自分で使う燃料を製造していた。
ゼフィーベの森のへんぴな山奥に住んでいるのは、空を飛べるドードーにとっては、陸路で往来できる土地を獲得する必要が無いからだった。
ジェットの力で空を飛ぶので、長い滑走路があると便利かもしれないけれど、ドードー・ジェットは小さなロボットだったので、小ぢんまりした自分の家が、特に不便だとは思わなかった。
人目を避ける理由は無かったのだけれど、人間に会いに行く用事が無かった。
ましてや、森の奥のドードー・ジェットの家に立ち寄る人間など、これまでいなかった。
けれども、ある時、ある少女がやってきた。
その少女には、羽があった。
「おぬしはいったい、どうやって来たのだね。」
「空、とんできました。」
どう見ても事件ではないけれど、ここでもまたひとつ、不思議な物語が始まったのだった。
ファスト・クラウド [ストーリー - キャラクター]
即席わき役、というようなものです。正確には、キャラクターとか作品とかいうよりも、その材料です。
3DCGソフト、ブレンダー(Blender)で立体グラフィックデータを作成する際、人物の体の動きなどを再現するために、データを入力してゆく作業があります。手足などの関節によく使われるのが、アーマチャー(Armature)と呼ばれるタイプのデータで、画面上では、棒や点などで骨格を模した形で表されます。
再現したい動きが多様になり、細かくなってゆくほど、アーマチャーも複雑なデータになってゆき、入力・調整に時間がかかります。
ファスト・クラウドは、逆に簡略化したアーマチャーです。主役として使うためではなく、一度だけ登場するとか、重要な表情をつける必要が無いといった、補助的な人物を画面に出す場合のために用意しました。ブレンダーのアドオンでも、人型に組み立ててあるアーマチャーは入手できるのですが、ファスト・クラウドはそれとは異なり、リンナミーシャほかの自作アーマチャーをもとにして、私が加工したものです。
主役キャラクターの中で、データ作成の工程を最も短くしたのは、蝶の司キャプテン・キュンメルでした。同じ期間内に、蝶たちやいもむしラゼンパのデータも作る時間を確保するためでした。
作業を迅速にするために、早くできるデザインにする、という段階から対策をとりました。当初は髪を結い上げているデザインも検討していたのですけれど、複雑な形状は避けることにしました。
リンナミーシャの顔と、遍歴のカーロの髪型のデータをコピーして、データ作成のスタートとしました。それに、他の女の子と違い、衣装は一種類だけにしました。アーマチャーももちろん、リンナミーシャやシャウラとほぼ同じものです。
細かいやりくりをしたのですけれど、それでもキュンメルのためにかけた時間は、合計すると一週間にはなりました。
一方、前回の記事に登場した、調査団の防寒服姿と雪山の大ザルの場合、データ作成開始から実働段階にできあがるまでは、2点あわせて3日間でした。
ファスト・クラウドの用意ができたので、必要に応じてさまざまな人物を画面に登場させることが、より早くできるようになりました。今後さらに、イラストの表現に幅ができるものと思っています。
リンナミーシャ達のアーマチャー作成については、トニー・マレン著『3Dキャラクタアニメーション Blender』(2008年 アスキー)の解説を出発点としています。リンナミーシャ達のデータは、同書のチュートリアルを私なりに発展させたものです。現在のバージョンのブレンダーの方がより使いやすくなっているので、それに合わせた改良も施しています。