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『空に迷う少女と黄昏の車輪使い』無料公開します [ストーリー - セッション]

 8月の目標だった2件のイベント、21日のコミティア117、そして28日の真夏のデザインフェスタ+GAKUTEN2016、両方とも無事に出展を終えることができました。ブースにお立ち寄りくださった皆様に、それとイベントを準備されるスタッフの皆様にも、感謝いたします。

 去る8月21日に開催されたコミティア117にて頒布した新刊『空に迷う少女と黄昏の車輪使い』を、Pixivにて公開します。

 以下はリンクです。
Pixiv『空に迷う少女と黄昏の車輪使い』

 印刷して頒布した版と異なる点がひとつだけあります。ウェブ版では、ふりがなを付ける部分を増やしました。コミティア参加の後で、ウェブ上での公開準備のために読み返して判断した箇所です。ご容赦ください。

 執筆前の計画メモの段階では、もっと長いシナリオでした。手作業ホチキスどめの製本で仕上げられる限度の全32ページに収めるため、重要度の低い部分を切り詰める作業に長い時間を割いてしまいました。

 読みにくい、分かりにくいといった箇所もあるかもしれません。ご意見やご質問などは、コメント送付などでお寄せいただければつつしんで拝読いたします。

 車輪使いの名前はファレンカム=サーク(Farrenkham-Cirke)といいます。
 「車輪使い」の英訳として用意していたWheelster、Wheel Master等の名称が軒並みブランド名や企業名として既に使われているので、また、黄昏や車輪などの言葉は創作のキーワードとしてありふれているようなので、ファレンカム=サークという固有名詞で呼ぶことにしました。
 少し長い名前ですけれど、由来は円周(circumference)です。

 これから、また新しい制作計画を進めてゆくことにします。今後も作品をご覧いただければ幸いです。


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すてきな、何もなかった日 [ストーリー - セッション]

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七つの風の翔ける郷の語り部 リンナミーシャ
地上の国に迷い込んだ空飛ぶ少女。親友のシャウラの家に居候している。

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貿易商のシャウラ・ディーミ
おおらかで社交的。数字の計算はミスが目立つ。

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空飛ぶちいさな ドードー・ジェット
人間の国に住み着いたロボット。侵略者ではないので、とくに敵視されていない。


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今回の原稿は、エジプトでの熱気球の事故が発生する前から、データの準備を進めていたものです。被害にあわれたかたがたには、つつしんでお見舞い申し上げます。

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 ゼフィーベの森の山奥に、ドードー・ジェットが住んでいた。
 ある日のこと、ドードーは町の市場に、野菜を持ってやってきた。


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 荷物を降ろしている様子を見て、リンナミーシャがドードーに聞いた。
 「転がって走っているあれも、ロボットなんですか?」
 「うむ。だがロボットとは言うものの、相当原始的なものである。言葉で話しても通じないから、教えてやることがあれば、じかに記憶装置に書き込まなければならん。」
 「原始的、といえば何だか、単細胞生物みたいに見えますね。」


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ちいさなドードーの ささやかなお話 [ストーリー - セッション]

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七つの風の翔ける郷の語り部 リンナミーシャ

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空飛ぶちいさな ドードー・ジェット

 ゼフィーベの森の山奥に、ドードー・ジェットというロボットが住んでいた。
 ある時そこへ、羽のある少女が通りかかった。

 ドードーがたずねた。
 「リンナミーシャよ、羽があるということは、もしかして…七つの風の翔ける郷の民なのかね?」
 「知っているんですか! わたしのふるさとのこと!」

 リンナミーシャがおどろくと、ドードー・ジェットはしきりにうなずいた。
 「うむ、すばらしい地だと聞いているのだ。」

 ドードー・ジェットがうれしそうに目を輝かせていた。というか、目を輝かせているような気がした。
 「はるか昔、地上の人間が戦争しか考えない野蛮人だった頃、空を飛べる民は狙われないように、飛ばないとたどり着けない、安全な場所に移住して、平和な国を築き上げたという。七つの風の翔ける郷は、伝説の地なのである。」

 リンナミーシャが、きょとんとした。けれども、ドードーは話し続けた。
 「一度はこの目で見たいと思っていたのである。よければドードーを、案内してくれないかね。」

 「お気の毒なんですけれど、それは無理なんです。」
 リンナミーシャが、力が抜けたような返事をした。というか、実際とてもがっかりしていた。

 「わたし、道に迷って、このゼフィーベの国にたどり着いたんです。ふるさとへの帰り道は、探しているところなんです。」

 ドードーが、ぽかんとしていた。もともと間の抜けた顔をしているけれど、なぜかいつもより、力が抜けているのが見て取れたのだった。

線路と道しるべと 返らない帰り道 [ストーリー - セッション]

 ななつの かぜの かけるさとの かたりべ リンナミーシャ
七つの風の翔ける郷のイルフェリフの娘 語り部 リンナミーシャ

黒い髪と、コンドルの羽をした少女。羽がない、空を飛ばない人間なんて、迷信だと思っていたけれども、あるとき、羽の無い人ばかりが住む、ゼフィーベという国へ迷い込んでしまう。
友達になった少女、シャウラの家に居候して、ふるさとへ帰る道を探している。


 へんれきの かがくしゃ エルンスト・カーロ
遍歴の科学者 エルンスト・カーロ

科学者をめざして、学問にはげむ少年。遍歴課程を、つまり修行の旅をしながら、ゼフィーベの地にやってきた。
気さくで、いつも前向きで思慮深い。孤独を愛し、権威やカリスマに対して用心深い。つまり、明るくニヒル。


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 「カーロ、お引っ越し、するんですか。」
 「修行の旅に戻るのさ。ぼくはもともと、この町の住人じゃないんだ。」
 「ふふっ、残念だわ。あなたのような風変わりな話題を持ってくる人って、なかなかいないものね。」
 「そのうち、また会いにくるよ。このあたりは仕事が見つかりやすいからね。」

町外れ。ふたりはカーロを見送りに来ていた。

 「飛行場が近くにあるのか。知らなかったな。」
 「最近できたのよ。このあたりって、畑や牧場だけだと思っていたけれど、そのうち高層ビルでも建つのかしらね。

小型の複葉機が、空高く飛んでいった。

 「この辺の野山はどうなるのかしら。人間の建物ばっかりにしないで、昔に返してあげたくなるわね」
 「そうだね。確かに悪い道へ進むものじゃない。でもね、昔へ戻っても、いいことばかりじゃないさ。

 このゼフィーベは、何百年か昔は、岩山と沼地だけの荒れた土地だったんだ。食糧不足や疫病が当たり前だったそうだ。作物は満足に育たないのに、病原菌や害虫ばかりが、はばをきかせていたのさ。何代もかけて水路を造って、きれいな水がどこにも行き渡るようにして、健康に生活できるように、少しずつ改善していったんだ。

 環境破壊はしちゃいけないけれど、わざわざ食べ物も飲み水も足りない暮らしに戻る必要は無いだろ。

 苦労して築き上げてきた何かが、必ずあるんだよ。それをみんな反故にして、昔へ戻れば、いいことなんか無いさ。悪い未来へ進まなければいいんだよ。」

カーロってば、あいかわらず難しいこというのね。と、二人とも思った。

 「あたし、考え方がまずかったのかしら。」
 「ええとですね、シャウラの考え方は正しいです。どちらも間違っていません。シャウラとカーロの言ったことは、おおもとは一緒なんです。」

 「そうだな。シャウラはいいやつだよ。
 ぼくは、自分に言い聞かせたようなものだよ。疲れて憂うつになるとさ、今まで苦労して築き上げてきた何もかもを反故にして、いっそ昔へ巻き戻しできたらって、つい考えてしまうのさ。」
 「あら、そんなこと考えちゃうの。ね、もしかして、昔に戻っちゃいけないから、ふるさとを出て遍歴しているってこと?」
 「え、そうじゃないよ。ふるさとへはいずれ帰るけれど、昔には返らない。それとこれとは別さ。」

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シャウラとキュンメル [ストーリー - セッション]

あかげの ぼうえきしょう シャウラ・ディーミ
夢みる赤毛の貿易商 シャウラ・ディーミ

ゼフィーベの一角にある、ささやかな商店の娘。
商人らしく、交友関係が広い。空飛ぶリンナミーシャをはじめ、ふしぎな友人もいる。
一方で、商人にしては、お金の節約が下手。

ちょうの つかさ キャプテン・キュンメルと いもむしラゼンパ
蝶の司 キャプテン・キュンメルと いもむしラゼンパ

キュンメルは、蝶たちと言葉をかわす、ふしぎな女の子。仲間である蝶たちから、キャプテンと呼ばれる。
ラゼンパ君は最年少のメンバー。最年少だから、まだ、いもむし。

( ほか登場人物については「プロフィール」ページに掲載しています。)
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 シャウラの両親が営む店に、キャプテン・キュンメルが買い物に来たのは一度きりだった。キュンメルの現金収入は決して多くはないようだった。
 それでも、シャウラとリンナミーシャは、キャプテン・キュンメルと時々会うようになっていた。

 キュンメルたちの本拠地がどこなのかは知らないけれど、キュンメルたちの出かけるコースはほぼ決まっていた。雨が降っていない日で、事件の捜査などが無ければ、お気に入りの公園や花畑で蝶たちと過ごすキュンメルに、会うことができた。
 時には、いもむしラゼンパもついてきていた。どうやって先輩のちょうちょに追いついたのかは知らないけれど。

お散歩どうし

 手土産をいちいち用意する間柄ではなくなっていたけれど、昼どきだったら、それぞれがランチを持ち寄っていた。
 お茶の時間には、キュンメルがハーブティーをいれることもあった。ただし、いろんなハーブを材料に試すので、いつもおいしいとは限らなかった。
 そうしたランチやティータイムの間、蝶たちも花の蜜を味わったり、草木のかげで休憩をとったりしていた。
 いもむしラゼンパは花畑をのろのろと歩き回っていたけれど、どうやら、いもむしとしては、走り回って遊んでいたつもりらしい。

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蝶たちが波止場に来た日 [ストーリー - セッション]

ちょうの つかさ キャプテン・キュンメルと いもむしラゼンパ
蝶の司 キャプテン・キュンメルと いもむしラゼンパ

キュンメルは、蝶たちと言葉をかわす、ふしぎな女の子。
事件が起きると、蝶々が飛びまわって、手がかりを見つけ出す。
そういうみんなのなかで、最年少の仲間がラゼンパ。
最年少だから、まだ、いもむし。


へんれきの かがくしゃ エルンスト・カーロ
遍歴の科学者 エルンスト・カーロ

修行の旅をしている、科学者の卵。
修行と言っても山奥にこもる類ではなく、仕事の依頼や情報を探して、普段は町や村を行き来している。
気さくで、いつも前向きで思慮深い。孤独を愛し、権威やカリスマに対して用心深い。つまり、明るくニヒル。

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 空から来た迷子のリンナミーシャは、懸命に帰り道を探している。親友のシャウラも協力してくれるけれど、助け合える相手というのが多いのは、いいことだと思っている。
 けれども、リンナミーシャがキャプテン・キュンメルと仲良くしたい理由はそれだけではなくて、人となりを知ったからだった。
 悪漢に対しては非情なスパイだとしても、その素顔は、蝶たちを仲間として、やさしくいたわる女の子なんだと、ひとへ伝えたかった。
 キャプテン・キュンメルや、いもむしラゼンパを、シャウラやカーロに紹介したいと思っていた。
 ただ、リンナミーシャには心配もあった。カーロのような科学者が、まるで魔女のようなキュンメルをこころよく思うかどうか、という不安だった。

 リンナミーシャはおどろいた。キャプテン・キュンメルからの手紙を持ってきたのが、カーロだったから。
 シャウラもおどろいて問いかけた。
 「カーロ、あなたって、キャプテン・キュンメルと仲がいいの?」
 「デートしたことはないけれどね。助けてもらったことがあるんだ。治安の悪い土地もあるからさ」

シャウラの家の通用口。中庭に面している。正面玄関側は店舗。

 簡潔だけれど、まるで大昔の貴婦人の書いたような手紙だった。シャウラ様のご一家はすばらしい貿易商だと聞いております、異国の美味な果物などを仕入れておいででしたら、少々いただきたく存じます、というようなことがしたためてあった。

 「返事を書いてくれれば、ぼくが届けるよ。そう約束してるんだ」
 「そうね。港の倉庫に、オレンジとかが届くはずだわ」
 シャウラは即座に、キュンメルと会う段取りを考え始めた。シャウラはキュンメルのことをまだ知らないけれど、キュンメルがこちらへのアプローチを望んでいると、この手紙から気付いていた。
 そこで数日後に昼食を用意して、一同で会うことにした。

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空の語り部と蝶の司 [ストーリー - セッション]

かたりべ リンナミーシャ
語り部 リンナミーシャ
羽の無い人の住む国へ迷い込んだ少女。貿易商のシャウラと友達になっていて、その家に居候している。


ちょうの つかさ キャプテン キュンメル と いもむし ラゼンパ
蝶の司キャプテン・キュンメルと いもむしラゼンパ

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 初めてその姿を目にしたときには、まだリンナミーシャは、その少女が何者なのか知らなかった。

 その少女は、身の丈ほどもある長剣を手にして、ならず者がナイフを振り回すのを相手に、たくみに受け流していた。
 こんな場面には似合わない、色とりどりの蝶の大群が周りを飛び回っていた。リンナミーシャにはなぜか、蝶たちがならず者をにらみつけて、すきをうかがっているような気がした。
 ならず者はなぜか、焦っているようだった。大男なのに、女の子ひとりの剣の腕に、圧倒されているかに見えた。聞くにたえない言葉をわめき、蝶たちを追い払おうと、必死になっているかのようだった。

 剣の一撃で、ナイフがはね飛ばされた。ならず者がぼうぜんとしていると、サイレンが聞こえてきた。
 警官たちがあわただしく駆けつけ、ならず者を取り押さえていた。
 あの長剣の少女も、蝶たちも、いつのまにか姿を消していた。

 その晩のニュースに小さな記事があった。― 手配中の強盗犯逮捕。潜伏先を発見され、逃亡を企てたが失敗し、今日の昼ごろ中央街付近で、警察官に取り押さえられた。― それだけの記述だったけれど、リンナミーシャは、これが昼間見た出来事だと気付いた。
 シャウラに話すと案の定興味津々で、どんな捕物劇だったのと、くわしく聞きたがった。
 信じてもらえるかどうか分からないですけれど、と前置きして、リンナミーシャは、あの長剣の少女と蝶たちのことを話した。

 シャウラは、話を疑いはしなかった。ただ、おどろいて答えていた。

 「あなた…キャプテン・キュンメルを見たのね」
 「シャウラ、知っているんですか」
 「ううん、あのね、あのひとのことは、誰も知らないわ」

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おてんばシャウラと遍歴のカーロ [ストーリー - セッション]

貿易商のおてんば娘 シャウラ・ディーミ
貿易商 シャウラ・ディーミ
友達思いで元気がとりえ。商売の腕はいまひとつ。

遍歴のカーロ
遍歴の科学者 エルンスト・カーロ
気さくでおだやか。ただしおしゃべりすると、難しい話題ばかり。

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 空飛ぶ迷子のリンナミーシャが、羽の無い人の住むゼフィーベの国へ迷い込んでしまったことは、世間では大きな話題になっていない。どこかの冒険家の船が巨大タコに襲われたとか、どこかの大富豪の自家用飛行機が空飛ぶドラゴンに食べられたとか、そんな大ニュースが、いつだってたくさんあるからだった。
 無責任なうわさ話がいくらでも流れてくるように、あてにならない人間も、いくらでもいた。リンナミーシャの故郷を見つける手がかりが必要なのに、情報を探すことにさえ、言い訳をならべて協力しない者もいた。悪い人ではないけれども、よそに仕事を抱えていて、リンナミーシャのために時間も知恵も貸せない人もいた。リンナミーシャが目の前にいるのに、羽で空を飛ぶ人間などいないと言い切る者もいた。
 つまり、人格でも能力でも信頼できて、立場や利害の食い違いも無い、という人物は、リンナミーシャの周りには、多くはなかった。これはリンナミーシャたちに限らず、誰にでも当てはまる事実だけれど。そしてリンナミーシャにとって、そういう数少ない友のひとりが遍歴のカーロだった。

「人格も能力も信頼できて、立場や利害の食い違いも無いような友は貴重さ。きみやぼくに限らず、誰にでも当てはまる事実だけどな」

 というような、なんだか難しい話題を持ち出すのも、たいていカーロだった。

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リンナミーシャとシャウラ [ストーリー - セッション]

ななつの かぜの かけるさとの かたりべ リンナミーシャ
語り部 リンナミーシャ
羽のある少女。空を飛ばない人の住む国に迷い込んで戸惑っている。

あかげの ぼうえきしょう シャウラ・ディーミ
貿易商 シャウラ・ディーミ
商人の一家の娘。好奇心豊かで友達思い。欲のからむ駆け引きは嫌い。

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 ゼフィーベ中心市街の一角に、シャウラ・ディーミの両親が営む店はある。一階が店舗で、二階から上が家族の住まい。シャウラは物心ついたころから、両親が貿易商としてはげむ姿を見ていたし、三階の子供部屋でじっとしているたちでもなかったから、自然と家業を手伝うようになっていった。

 ただ、シャウラは働き者だけれども、仕事を選ぶのは下手だった。大事かどうか考えないで、一心不乱になるのが常だった。確かに商品や帳簿の整理をするような時もあったけれど、ジャムを作るのに熱中した日もあれば、なぜか家じゅうの窓ふきに、一日かけたこともあった。
 そんな毎日は、シャウラへの理解に欠けた者からすれば、単なるひまつぶしと見分けがつかなかった。

「どうしてジルおばさんは、あたしのこと、なまけものっていうのかしら…」

 毎日くたくたになるまでがんばっているのに、周りから認めてもらえない理由が、シャウラにはわからなかった。

 シャウラは勘が鋭いくせに、見落としが目立つ娘だった。リンナミーシャがやってきたときも、シャウラは気付きもしないで、別の何かに打ち込んでいた。いつのまにかリンナミーシャがシャウラの家に連れて来られていて、いつのまにか周りの大人から、仕方ないから面倒を見てあげなさい、と言いつけられていたのだった。
 もちろんシャウラは快く応じて、ふたりはほとんどの時間を一緒にすごすようになった。リンナミーシャの故郷を探す、ほんの少し長い月日はこうして、いつのまにか始まっていた。

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