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敵ができる世界はお好きですか? [ポリシー]

暗闇の中から顔だけ見せている敵キャラクターたち

 先月制作した漫画について、大したシナリオではないけれど時間がなくなるから執筆を始めた…とブログに書いたことがありました。
 実は、戦いを省くつもりでした。敵が出てこないシナリオにしたかったんです。

 この前の漫画には得体の知れない化け物が登場して、物陰から主人公たちに向かって野次をぶつけていました。

 当初は化け物ではなく、人間が主人公への悪口を並べ立てる話も考えていました。
 けれども、考えていて、嫌な気分になってきました。その悪役の人間は、なぜそこまでゆがんだ心の持ち主になったのか、どうして主人公は、そんな人間と関わる仕事をしなければならないのか…面白くない作品制作になるところでした。



 戦っても、物事は解決しないものです。

 いつでも武器を出せるんだと周囲を脅しても、周りと親しくなれるわけではありません。
 武器を見せびらかすことが戦いを防ぐ、という人もいます。しかし、周りの人たちを絶えずおびえさせていることなど、平和とは言えません。

 関係がうまくいかない相手とは、まず話し合いのはずです。どうやって戦うかばかりに集中するのは、相手との関係がこじれて取り返しがつかなくなる時を待っているかのようです。

 誰かが争っている場に、武器を持って加勢に行くのも愚かなことです。どちらか一方が友達だから、という幼稚な図式ではありません。現実の争いというのは、どちらにどんな非があって、何が原因なのか、複雑な問題です。たとえ困難でも、両方の間に入って言い分を比べて、解決策を探すべきです。

 一度加害者になった者は、被害者からの強い憎しみを買い、周囲からは不信を買うものです。傷つける手段や挑発する手口を使うのは、自らの立場を悪くする行為です。

 危険な敵というものは、ある日突然現れるものではないのです。私たちは現実の社会で生きてゆくうちに、どんなことをすれば誰が敵意を抱くのか、どういうことが争いのきっかけになるのかを学んでいるはずです。
 身近にいる誰かが敵になる前に、危険な者がすぐそばにやってくる前に、そして武器を取り出す前に、するべきことがあるんです。

 相手のメンバーを皆殺しにするという争いの終わらせ方は、現実とはいえません。一度争いを始めたら、どうやって終わらせるかを必死で探る、困難な道しかありません。
 どうやって戦うかの前に、戦いをしないためには何が出来るのかを地道に考えることが合理的なんです。



 この種のことは、ずっと昔、もっと安っぽいシナリオばかり考えていて気がついてきたことです。
 それでも時間のやりくりが下手だったばかりに、結局今回の漫画は、これまでの経験を活かしきれない、安っぽさの残るシナリオにしてしまったのでした。

 せめて人間同士で争う話にはしないようにしました。それで得体の知れないお化けだったというわけです。
 もしかすると生き物ですらなくて、主人公や私たちの心の中にうごめく、不安や憂鬱そのものがキャラクター化したものかもしれません。

 現実、勇気や強さは必要です。けれどもそれは、誰かと戦うためではなく、愚かな争いを起こさないための勇気・強さなんだと思います。


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