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車輪使いファレンカム=サーク 登場の経緯 [パーソナル ノート]

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 先月完成させた漫画『空に迷う少女と黄昏の車輪使い』に登場した車輪使いについての話です。

 登場にあたってイメージしていたのは、たとえばムーミン谷の「飛行おに」のようなキャラクターです。そのせいか、白ずくめでひょろりとしています。
 性格を考えながら、イーデン・フィルポッツのファンタジー小説『ラベンダー・ドラゴン』も思いおこしていました。そのせいか、ラベンダー色の目をしています。漫画本編の白黒の画面では分かりませんけれど…。
 それに、ハイジのおじいさんとか、主人公の周囲で物語に関わってくる、年配の人物像をヒントに性格作りをしていました。
 年長者ですが、デウス・エクス・マキネにはしない、ということは当初から決めていました。つまり、事件の舞台に最後に現われて偉そうに正解を教えてやる、というタイプではありません。

 ファレンカム=サークが人気者にならないことは承知しています。2010年頃デザインフェスタ出展に持参した絵の中で、一度だけ出番を設けてみたことがありました。誰にも相手にされなかったものです。
 それでも今回登場させたのは、主人公リンナミーシャが議論する場面を出すことにしたからです。意見をたがえて対立する相手ならば、主人公よりも強そうで、見るからに優れた知性の持ち主がいい…漫画としての盛り上がりのためなら、不人気なデザインのキャラクターも使えるのではないか。そう思って試してみました。

 リンナミーシャが対立する、と言っても、相手が無知、邪悪だから、つまり、とにかく叩きのめしてしまえばOK、ということにするのは避けました。
 相手を短絡的に敵とみなす、単に打ちのめして追い払えばいいに決まっている、そんな風潮はしばしば見かけますが、単純で派手なだけの、薄っぺらの対決で終わってしまう気がしました。

 自分と境遇が異なる相手を、ただ非難すればよいというのであれば、それはそれで気楽かもしれません。世の中を見る目を単純化できます。闘争心をむき出しにできる限り、何でも片付けられるでしょうね。
 シナリオを考える場合でも、敵が傷ついてこの世からいなくなることにすれば、楽かもしれません。

 相手の立場を推し量る方がずっと大変です。価値観が違う、意見が合わない相手と話し合うのは、とても疲れます。
 でも、立場や考え方が違う相手と話し合わなければならない、相手の立場・価値観を尊重しなければならない、合意点を探らなければならない、そんな場面は、現実にいくらでもあるものです。

 確かに、得体のしれない勧誘は断ればいいし、犯罪者には近寄らなければいいでしょう。話し合わずに終わらせる場面もあります。けれどもそれは、なんとなく気の合う相手とだけつるんで口をきいていれば生きてゆける、という意味ではありません。

 こんなふうに考えた末に、精神的に年老いた車輪使いが、相手としてふさわしいと思えてきました。作中で、わしはこの頃疲れてきた…と言ってネガティブなアイデアを話しますが、話している本人も信じてはいなくて、悲観的になったり優柔不断に陥ったりしやすい心理ゆえの発言なんです。
 疲れやストレスのせいで捨て鉢になっている時に頭に浮かんでくる「死にたい」「殺してやる」というような、本気にしてはならない発想なんです。

 今の段落で書いたことだって、私個人の感覚にすぎなくて、ひとには通じないのかもしれませんね。世の中には、疲れてストレスをためて、追いつめられると気が高ぶって実力を発揮できる、という人もいるようです。人を傷つけることが好きだから、後付け的に敵を作ったり、戦う口実を探したり、という人もいるようです。
 それでも、相手をただ打ちのめせばいい、ということではないんです。私個人も尊重してもらいたいから、自分の考え方を主張し続けるんです。

 それはそれとして、ファレンカム=サークばかりを画面に映しているよりは気がなごむのではないかと思って、その仲間として時計仕掛けのフィボートを考え出しました。

Phivote_20160904.jpg

 フィボートは比較的好評だったし、ファレンカム=サークを登場させたことも、決して無駄ではなかったと思っています。
 考えてみればハイジのおじいさんよりも、ハイジ本人の方が人気者なんですからね。ダサいキャラクターでも登場する意義があるという局面も、時にはあるはずです。うん、どんなひとにも生きている意味があるんだ!




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