顔を活かす骨折り
シェイプ・キーを作り足す作業は、特に疲れます。
Blenderで顔の表情を作るためによく使う機能が、シェイプ・キーです。
腕や脚の骨格の動きを再現するアーマチャーでは表現しづらい、顔のまぶた、口、ほおの動きを、ポリゴンの頂点の移動データとして入力するものです。
動画作成用の機能なので、スタートのポリゴンの原型、ゴールの頂点を移動しきった形という、両方のキーフレームがそろえば、Blenderが補間します。目を開けた時と完全に閉じた時を作成すれば、半開きの状態を自由に出せるようになるわけです。
要するに3Dデータの人物造形で、顔の表情を作成する作業です。
シェイプ・キー自体は他にも用途がある機能ですが、シェイプ・キーを操作するから疲れるのではなく、人物の顔を表現する作業だから、神経を使って疲れるんです。
漫画を書いてきて思ったことですけれど、戦闘シーンで盛り上げるのではなく、会話の場面や日常生活を描いて画面に変化をつけようとすると、表情の重要さが分かります。
ひとつひとつの表情が充分な造形であって、種類が多様でなくてはならないと分かります。
笑顔はいいことだけれど、実際には下まぶたの位置とか、ほおの上がり方とか、そんなわずかな違いで、楽しくて笑っているのか、作り笑いなのか、変わってしまうものです。
これまで公開してきた漫画で、表情が今ひとつの場面は数知れずありましたが、充分な造形にするのに、いつも苦労しているということなんです。
いい笑顔を作れたとしても、いつも同じ笑顔ではやっぱり不自然になってしまいます。
口をあけて笑っているシェイプを作れたら、口を閉じた笑顔も作る。
シェイプ・キーを部位ごとに枝分かれさせて、目を細める度合いと口の動きとを別々に制御する。
造形として改善の余地があれば、形を編集する。
まぶたの位置、口の端の高さ、そういったほんの1個や2個の頂点が、表情の出来栄えに関わるものです。
実際のところ、人間キャラクターの全員、顔のデータに記録してあるシェイプ・キーのいくつかは、いつも未完成です。
地味な作業です。時間がかかって、シナリオ作りや他の必要な作業の時間を圧迫してしまうこともあります。
表情の準備に時間を使いすぎて、シナリオ決定が遅れて、いろんな面にしわ寄せが及んで、印刷・製本がギリギリになる心配もあります。
でも、この準備を省きすぎると画面を退屈にする要因になってしまう。
ただでさえ全然売れていない作品なのに、ますます相手にされなくなる。
…がんばりましょう。時間配分に気をつけて。
感染症対策といったことで、イベント開催がどうなるのか、しばらくは分かりませんけれど、もしも出展できないとしても、私の作品でしかるべき評価と収入を目指すということには変わりはないんですから、作品づくりは気を抜かずに進めるつもりです。
売れそうな作品アイデアを探せ!!
リンナミーシャと名探偵クプーリテ・ホームズが何か探しているようですが、こんな絵を描いて先日、送付しました。
5月開催予定のコミティア132extraへの、参加申し込みです。
今回は受け付けるサークル数が少ないようなので、倍率が厳しいだろうとは思いますが、申し込んでみました。
同人誌頒布が目標ではなく、作り手としての鍛錬の過程です。
作品を認められて、仕事として作品を作る立場にたどり着きたいからです。私の性格や特技が尊重される立場になって、人生を送りたいからです。
物語や絵を書いて、相手にされる日が来るように。
外食宅配か交通誘導員だけが収入源だった、いかなる作品企画にも携わる機会が無かった、作家と呼ばれることは生涯無かった、などと言われないために。
…それでもどんな将来があるのか分かりませんけれどね。AIがアーティストの仕事ぶりを完璧に再現する。量子コンピューターが普及する。
…私が作品をほんの少し持ち込んだら、評価できる部分を企業の量子AIが盗み取ってしまうようになったりして。
私が10万年かけないと作れない質や量の作品をAIが3分で作るようになって、私は全くお金をもらえない…なんて時代も来るのかも。
…悲観的にもなりますが、つまり手遅れになる前に努力するしかないということです。
抽選結果の通知を待つのではなく、すぐに作品の準備を始めます。いや、すでに始めています。
評価を得られる道を探します。
『虹のペリュトン』制作をひとまず終えて
また今度も印刷・製本完了が、コミティア開催当日の朝になってしまいました。
『虹のペリュトン』(Pixiv)
『虹のペリュトン』は製本としては全32ページの漫画です。本として完成はしたけれども、絵が粗いコマはあるし、シナリオにも推敲の足りないところが残りました。
昨年末にブログのURLも変更になったのに、奥付に古い方のURLを載せたまま印刷してしまいました。
表紙も、タイトルしか書いていないようなものです。開催当日の未明に作っていた部分なので、早く印刷や製本の作業をしないと間に合わなくて、表紙に凝った絵を描くことはあきらめました。
このおかげか、作業や出発は辛うじて間に合って、2018年末のコミティアの日と違って、遅刻はしなくて済みました。
でも、こんな表紙の本で、前もって何も宣伝していないのでは、看板が無い店のようなものです。お客さんが寄り付くはずもありません。
昨年末に作品の準備をしていた時期に無駄なことで迷ってしまったために、シナリオを決めてネームを書くことが遅くなりすぎました。
1月の終わりごろから原稿執筆を始めたので、当日に間に合うのか不安になって、大急ぎで制作しました。
全32ページとして執筆したのも、ページ数短縮のためにはシナリオ検討の時間をさらに増やさなければならなかったからでした。
今回は間に合ったけれども、今後同じペースで作品制作ができるという意味ではないと考えています。
実生活で片付けなければならないことを先送りにしてばかりだったし、睡眠も充分にとらないと体調にも響きます。
現実面でも健康管理の面でも、こんな日程で漫画を書く状況は無い方がいいでしょう。
ページ数を短縮することはできなかったけれども、場所の移動を少なく抑えて、背景を作成する作業は増えないように気をつけることができました。
話の多くの部分は、家に囲まれた中庭で進みます。こういう庭のことはパティオと呼ぶそうです。
冬の出展に持参する作品なので、当初は屋内を舞台にしようかと思っていました。
けれども、翼を持つペリュトンが飛来する場面があることは決めていたので、部屋の中では、ペリュトンがどうやって入って来るのか、面倒な描写をすることになってしまうのではないかと思いました。
それで、主なやり取りは屋根の無い区画で進めることにして、季節がいつなのかは、あいまいにしました。
窓・扉をひと組だけ作成して、配列複製で建物の形にする方法ですが、この建物の3Dデータも、1月末から2月初めにかけて、本文を執筆しながら作っていったものでした。
中盤で大きな建造物群が並ぶ場面があります。いつ、どこの出来事なのか説明していないのも、セリフを作る作業を節約したからです。
ここの建物は現代のコンクリート建築のような、表面に何も模様や色柄の無い、無表情な建物です。この舞台は悪役・縦精怪コードフィーンドが登場するためだったからです。
縦精怪コードフィーンドは表面に複雑なディテールを作成したので、どこかのアニメや特撮番組に全く同じものが出てきているようなことは無いのではないかと思います。敵として作ったキャラクターですが、よその猿真似ではないと言えるように、苦労して考え出したものです。
でも、このディテールのせいで、背景に入り組んだ物を置けなくなりました。背後が街並でもややこしいし、野山や木立では、もう何だかわからなくなります。
それなので、無表情な建物にしました。魅力ある被写体かそうでないかに関わらず、画面を作り上げる作業は何かしら苦労があるものです。
赤毛のシャウラと語り部リンナミーシャが、目上の人物と話している部屋も、執筆と同時進行で作成したものでした。
目上の人物は後姿とセリフだけです。主人公たちを非難する悪役なので、実在する人物を思わせる外見にしてはならないと考えました。シナリオ上重要な人物ではないという意味もありますが、実在の誰かをおとしめる内容は避けるべきだからです。
リンナミーシャが育てている、宙に浮く花も少し登場します。
リンナミーシャは武器を持って戦うのではなく、対話で相手の性質や意図を引き出すような立場を目指すようにしたいと思っています。
この花も武器になるのではなく、やり取りの場で宙に浮いて動くことで、話し合いにアクセントをつけるために使えるのではないかと考えて、こうして登場させてみました。
作品制作を、きつい進め方にしてしまったけれども、今後改めるとすれば、時間を無駄にしない工夫や、体調や実生活に悪影響を起こさない対策であって、作品のハードルを低くすることではないと考えています。
達成不可能な仕事を請け負うのはよくないけれど、簡単すぎる作業ばかりでは、制作の中で気が付いて向上させる点が少なくなってしまうようです。
『虹のペリュトン』は完璧ではなかったけれども、もしも、もっと小規模な作品だけでお茶をにごしていたら、経験から得たものはもっと少なかったのだろうと思います。
その収穫をひとつひとつ挙げるよりも、この先の作品で実践していくつもりです。
今度の作品づくりもきつい作業だったし、できばえも名作には程遠い。でもあきらめずに完成させたことが、私にとっては何かを得たことになると思います。